楽器の声に任せる
このところ、「演奏者」としての自分のエゴを手放して、「楽器」の声に任せるという過程に、本格的に身を委ねつつあります。
春になってきたからでしょうか、細胞がなんともわくわくとしていて、高い音がこれまでより楽に出るようになりました。また、フィオリトゥーラも、これまでよりも一段階上がったところからコントロール出来るようになってきたように感じています。これまで、それほど精度の高くなかったセミラーミデも、コントロールがかなうようになってきた感覚があります。ルチアの狂乱の場面のカデンツァも、以前よりも楽にアプローチがかなうようになってきました。
ドイツオペラのレパートリーも深めていきますが、今は楽器が向かいたい方向に向かわせてあげようと腹を括って、広い空間で楽器を鳴らす時間を大事にしています。狭い空間だとなにもかもが萎縮してしまうので、広い空間にのびのびと在ることを大事にしています。
4月は懐かしい教則本に立ち返って、マチルデ・マルケージ月間にすることも決めました。フィオリトゥーラの精度を上げていきます。私の声ではそんなに回らなくてもいいかな…と日和ったこともあったのですが、そんな甘いことを楽器は許してくれないみたいです。もっと!隅々まで使って奏でなさい!!と言っているようです。仕方がありません。しっかりとやっていきます。
楽器は、新しい段階に向けての体の調整も求めています。もっと軽やかに、いい筋肉を。いいタンパク質を摂って、体の源に。要らないものは、軽やかに流していって。そんなことを求めています。栄養学のご本などを読んで、ひとまず今週は調整週間にあてることにしました。お白湯をたくさん飲むようになって、リンパマッサージも始めました。体を動かしていると、じっとりと汗ばんできます。体をリセットしていく意味でも、ひと月に一週間ほど調整週間を設けるのは、長い目で見てもよさそうです。
いま、この楽器で、自分の原点となったザンドナーイの《フランチェスカ・ダ・リミニ》などを読んでみたら面白いかもしれないなあ…と思いますが、まだその時ではなさそうなので、先の楽しみとして取っておきます。今はベルカントのオペラを奏でることを、とにかく体が求めています。
夜の女王のカデンツァにも少しずつアプローチしています。三連符の連なりのところをひと息でいくのって、なんて難しくて楽しいの!と、わくわくしています。High Fはレガートでは掴めるようになってきました。スタッカートは、まだ次の段階です。
年初のレパートリー計画とは、違った方向に進みつつあります。それが怖くないと言ったら、嘘になります。今年はエレクトラを仕上げたかったな…という気持ちもあります。でも、それは演奏者としての自分のエゴなのでしょう。主たる楽器が「こっち!」と言ったら、演奏者は「オッケー、それならその方向での最善策を考えていこう」とサポートしていく他ないのです。
そんなわけで、レパートリー計画の青写真は、白紙に戻りました。まったくの白紙ではないのだと思いますが、エレクトラを歌えるようになる!という目標に関しては、またあとで…ということになりました。でも、まあいいかと。未来予想図のあるような、ないような、そんな状態で、楽器の進みたい方向を優先させてみることで、予想もつかなかった場所にたどり着く可能性もあったりするのだろうと思います。
そんなわけで、変化の春です。
新しく始めたstand.fm でも、変化にあたってのあれやこれやを語ってみました。
stand.fm は、お友達が始めてらして、私も一緒に始めてみました。昨年もWEBラジオをやっていましたが、途中で途切れてしまったので、今回は続けていきたいな…と願います。
そんなこんなで、変化の春です。みなさまもどうぞ、お健やかに変化の時期をお過ごしください。
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