ちょっとした趣味

意外に思われるかもしれない趣味は、本屋さんでビジネス書コーナーを見て回ることです。


平積みされているご本や、本屋さんが推しているご本の背中や表紙を見て、「なるほどなあ、いまはこういう考え方が流行りなのだなあ」とふむふむ考えたり、興味のある本は拾い読みしてエッセンスを頂いたりして、自分には足りないビジネスセンスというものを磨いていけたらいいなあと思っています……というのは、完全に後付けの理由で。


単純に、ビジネス書のシンプルさが好きみたいです。わかりやすくて、いい。あと、普段はロジックで片付けられない領域に身を置いているから、反対のベクトルのものに心惹かれるのかもしれません。


そんな中で、自分なりに相性のいいビジネス書と、そうでないものと、表紙を見ただけでなんとなく判断がつくようになってきました。


相性がいいものは、とにかく光っています。本屋さんの中で、ぴかっと。


そういうものを手に取ってみると、著者の言葉がとてもシンプルで力強いです。言い訳めいた著述とか、遠回りな論理展開とか、一切ない。ストレートに、どしんと直球が来る。


これまでの中で、言葉のちからを一番感じたのは、松下幸之助さんの『道をひらく』です。一篇が500文字程度なのだけど、とにかく言葉が力強い。シンプルで、生きている。光っている言葉があまりに美しくて、書写を始めたら、ものすごく濃いエスプレッソショットのように、凝縮された言葉の集まりだということが分かって、打ちのめされました。あまりの衝撃に、自分の書いてきた言葉を深く恥じました。


逆に、試しにあんまり光って見えない本をあえて開いてみると、なんだかもんにょりしています。ツボにはまらないマッサージみたいで、よくわからないけれど撫で回されている感じで、目次を読んで、何ページか拾い読みしていくうちに、もういいや……となって本を閉じて、書棚に戻します。いくばくかのMPを吸い取られたような気もします。ううう、やられた、と思いますが、同時に自分の感覚は正しかった…と確認することも出来て、ほっとします。


そんな風に本屋さんで一期一会の真剣勝負を繰り返すうちに、ビジネスの世界で美しいとされることも、音楽における美しさや心地よさと通じるのかもしれない……と感じるようになってきました。いえ、ビジネスに限らず、言葉にせよ、マッサージにせよ、なんにせよ。心地よい、美しいと感じるものはすべからく、「快い」という世界の住民なのだから、その住民のみなさんと深く仲良くなることが、心地よい人生を送れる秘訣なのかもしれないなあ、と漠然と感じたりしています。


そういえば、最近のビジネス書のブームは、ビジネスとアートを結びつけることみたい。写真のご本も、その文脈の中にあるのかな?というもの。面白いです。ああ、ビジネス書の世界もやっとここまで来たか…と思うけど、きっと本当はビジネスもアートも垣根なくて、それぞれの領域でどれだけ自身の美意識や道徳心を研ぎ澄ませていけるかだと思うのです。垣根なく、お互いの領域をリスペクトし合いながら、手に手を取りながら、新しい道を拓いていけたらいいですね。

藤野沙優 Official Web Site

まあるく、生きる。 まあるく、暮らす。