引き算のくらし

このWebサイトを作る前の冬から春にかけて、

かなり大規模にデジタルデトックスをおこなった。


2015年から運営していたTwitterアカウントを卒業して、

ブログもnoteも卒業した。


それまで、毎日のようにスマホの小さな画面を見ていたけれど、

なんだかすっきりと解き放たれた。


毎日、楽譜を開くのがより楽しくなった。


たくさんのことを語りかけてきて、

教えてくれる楽譜と、

お茶を飲みながら毎日デートしているような気がした。


そんなふうに楽譜とデートする毎日を過ごしながら、

ゆっくりと本を読んだり、

自分の内面をノートに書き出して整理していった。

中でも、心惹かれたのが松浦弥太郎さんのご本。

『しごとのきほん くらしのきほん 100』は、

その名前の通り、

松浦さんが考えられた仕事と暮らしの基本となる、

100のルールが書かれている。


その本との出会いがきっかけで、

じぶんの定番となるルールや、もちものって、

いったい何だろう……と考えるようになった。


そうして、じぶんの定番を書き出しているうちに、

じぶんにとっての心地よさが理解出来るようになってきた。


「ほんとうに必要なものって、実は少ないんだ。

あれもこれも大事にしなきゃ……って思ってきたけれど、

その季節はもう過ぎたのかもしれない」


そう気付いたら、重たい荷物を下ろしたように、

こころがふわっと軽くなった。


そんな過渡期に、師匠のレッスンと、

東京・春・音楽祭の「グレの歌」の稽古が同じ日に重なり、

師匠とコーラスコーチのブラウアーさんが、

「音楽は〈へらす〉ことが大事」という旨をそれぞれおっしゃられて、

乾いた土に水がしみこむように言葉がしみこんだ。


それぞれ、違う文脈の中の言葉ではあったけれど、

自分の背中をなでられて、励まされたような気がした。


そんなわけで、最近は引き算の暮らしを大事にしている。


へらしていくこと、手放していくことはとても心地いい。

手放した分だけ自由になって、

風を自由に感じられる気がする。


いずれ、わたしもこの世界を旅立つ。

世界がわたしを手放すのか、

わたしが世界を手放すのか、

それはわからないけれど、

その時はきっと、なにか大きなゆたかさの中に還るのだろう。

藤野沙優 Official Web Site

まあるく、生きる。 まあるく、暮らす。