Denbyのカップ&ソーサー

いつものように、丸の内の丸善をぶらぶらしていると、

その日はイギリスアンティーク雑貨のフェアをやっていた。


あら、素敵ね……と足を止めると、

優しい色合いのぽってりとしたカップ&ソーサーと目が合った。


縁は栗色、全体は優しい黄土色。

なんともいえず、穏やかで優しく、

どっしりとした佇まいにひと目で惚れ込んだ。


この器と共に生活したいな、

この器みたいな歌をうたいたいな、

直感的にそう感じた。


──でも、この器みたいな歌って、

いったいどんな歌なんだろう……。


そう思ったら、

日々の暮らしの先にある答えが知りたくなって、

この子を連れて帰ることに決めた。


包んでいただきながらご店主とお話をしたところ、

この子はDenby社で1970年代に作られたものだとのこと。


普段使いをコンセプトにしているDenby社は1809年創業。

ダービーシャー州産の超強力な土を使って作られた製品は、

イギリスで広く愛されている。


何気なく目が合って、ひと目惚れした器が、

自分が生まれた年代に海を越えた国でつくられ、

それぞれ違うところで時をすごし、

こうして日本で巡り会ったということに、

なんだか不思議な縁を感じた。


それからは毎日、

この子でお茶や珈琲を飲んでいる。


器の肌はぽってりと厚く、なめらかで、

気取らずに、たくさん入れて飲むのにいい。


朝はカフェオレか、ミルクティー。

牛乳をたっぷり入れて、書き物をしながら飲む。

休みの日には、蜂蜜とちょっぴりのラム酒を加えるのがお気に入り。


最近はカフェインに弱くなってきたので、

夜はもっぱらルイボスティー。

眠る前には、たまにカモミールティーをいれる。


譜読みをする時も、勉強をする時も、

この子がそばにいてくれるだけで、

生活がすこし嬉しく、ほんのりと明るくなった。


この器のような歌が、

どんなものかはまだわからないけれど、

いまはそれでいいと思いながら毎日を共に過ごしている。


今朝はミルクティー。

そういえば、この器の優しい黄土色と、

ミルクティーの色はよく似ていることに、改めて気付いた。



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