深い焔、畏れの気持ち


 ずっと迷っていましたが、これまで避けてきた《パルジファル》の勉強を、少しずつ始めました。

 なんておそろしい作品だろうと、楽譜をめくるたびに震えを覚えます。目眩を感じます。これほどまでに、作品に対して畏れの気持ちを抱くことは初めてです。

 楽譜を読み、音楽と言葉に触れるたびに、自分が深い闇の中に投げ出されたような心許なさを覚えます。怯えにも近い感情が湧いてくるのを感じます。

 最初は1〜2ページ進むだけで、楽譜を閉じるほど、作品の持つエネルギーの渦にやられていましたが、少しずつ踏みとどまれるようになってきました。

 おそらく、自分はこの役を歌うには、まだ早いことは、よく理解しています。まだ時は来ていません。けれど、数年後には時計の針が合うかもしれないことも、漠然と予感しています。

 だからこそ、今から勉強を始めておこうと決めました。準備の時間を長く持とうと決めました。

 ニーチェの言葉を思い返しながら、深い焔に灼かれるような心持ちで、作品に向き合っています。これまでで、もっとも畏れを感じるこの作品に。


 時間をかけて、ゆっくり大事に。少しずつ、歩みを進めてまいります。