陰翳を愛おしむ
一昨年から取り組んでいる《エレクトラ》は、大変な作品です。なにより、台詞として語っていかなくてはなりません。
その稽古の一環として、グリム童話の『白雪姫』をドイツ語で朗読していく練習を始めました。役によって声色や呼吸の深さを変えたりと、いろいろと試しています。
現在取り組んでいる作品は、どれも深い内面を扱っているのですが、不思議とそれが、自分にはとても居心地がいいのです。
こうして取り組んでいると、自分にとっての芸術とは、思考であり哲学であり、言葉を謳うことなのだと、しみじみと感じます。
自分の魂の居場所として、とても幸せなのです。思考を深めることこそが、自身の芸術を深めていくことと繋がっていて、それがとても自然な循環の中に在ることが出来ると感じています。
先日、ETVで見た「陰翳礼讃」の映像に深く感じいるものが多くありました。それも自身の芸術観を改めて見直すきっかけとなっています。
おそらく、自身にとっての芸術とは、「闇に光を当てること」なのです。そして、そこで生まれる陰翳を愛おしむことなのです。
これまで、強い光の中で更に強い光を発していかなくてはならないと思い込んでいましたが、そうではなく、自分の魂にとって心地よい在り方を探っていこうと思います。
陰翳を愛おしむように、言葉と、精神と、音楽に寄り添っていきたいです。
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