呼吸と脱力のはなし─(3)マインドフルネスへのアプローチ

 声楽初学者の方、そして合唱愛好家の方に向けたコラム「呼吸と脱力のはなし」。第3回は、「マインドフルネスへのアプローチ」を書いていきます。


マインドフルネスな状態とは

 禅のメソッドを欧米に取り入れ、より抽象化・メソッド化したのが「マインドフルネス」。自分自身の「在る」状態をただ観察し、浮かび上がる雑念などを自分から切り離して、心身の健康を整えていくのがマインドフルネスです。

 私自身は無宗教の有神論者という立場ですが、体から心を整えていく禅宗で育ち、欧米で発展を遂げたマインドフルネスの考え方に出会ってから、自分自身の扱い方がとても楽になりました。

 うまくゾーンに入ることが出来ると、時間がとてもゆっくり流れていくのを感じます。自分の知覚域が広がり、聴覚などの感覚が研ぎ澄まされ、外界のひとつひとつのアクションをゆっくりと感じられます。

 さて、呼吸のコントロールを通じて、いつでもマインドフルネスな状態に自分を置くことが出来るようになると、自分という楽器を自由に扱うことが出来るようになります。歌唱面でももちろんですが、細かな手や指の動きや、目の動きに対しても、責任を持って扱うことが出来るようになります。

 自分を自由に扱うことが出来るようになると、作品に対してより誠実に向き合うことが可能となります。また、舞台上で自分自身の選択する行動に対して、深い自信を持つことが出来るようになります。


マインドフルネス実践編──2・2・2の呼吸

 では、マインドフルネス実践編として「2・2・2の呼吸」に取り組んでみましょう。

①2カウントで、息を長く吐きます。この時、アイスコーヒーのストロー位の直径を保つように、息を細く長く吐いていきます。

②2カウント、止まります。肩は楽に。首も楽に。この止まっている時に、体の内側をよく観察してみましょう。そして、どこにも力の入っていない状態を味わってみましょう。

③2カウント、細く長く吸います。この時、両方の鼻の穴から吸うことを意識しましょう。そして、鼻腔の奥を流れる空気の涼しさを意識してみましょう。鼻から気道に向かう空気の流れを、細かく意識してみましょう。

④再び、①に戻ります。次のサイクルでは、背骨にも意識を広げていきましょう。息を吐く時には、背骨が伸びる。息を吸う時には、背骨が縮む。体の構造を意識しながら、自分の体の地図を精密に育てていきます。

 ゆったりと好きな音楽を流したり、好きな香りと共に呼吸を愉しむのもいいと思います。呼吸を通じて、自分の体の内側を意識していく時間をつくってみてください。

 徐々に馴れてきたら、他のカウントでのアプローチもあります。でも、それは次の段階の話。

 まずはこの「2・2・2の呼吸」にじっくり取り組んでみるのが、いつでもマインドフルネスな状態に自分を置くことが出来る近道です。


今回のまとめ──困った時には、2・2・2の呼吸

 今回のまとめは、

◎困った時には、2・2・2の呼吸

 これだけ覚えておいていただければ、と思います。

 本番前、心臓がいつもより早く打って、呼吸が浅くなっている時。そんな時には、ゆっくり息を深く吐いてみてください。また、眠れない夜にも、ゆっくりと息を深く吐いてみてください。

 そんな繰り返しをしているうちに、歌唱の場面のみならず、普段の生活でも心穏やかに過ごしていくことが可能となるようです。普段の生活の中でも、感情的に波立つことが起きたら「2・2・2の呼吸」を意識的に取り入れてみてください。


次回は、呼吸と脱力をより深く絡めたお話です

 次回のコラムでは、呼吸と脱力について、よりふたつの連関を深めてお話していきたいと思います。

 また、呼吸のトレーニングについても、息の直径を変えていくことでどんな訓練が出来るのか…ということについても、ゆるゆると記していきたいです。

 それでは、また!

藤野沙優 Official Web Site

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